鍼灸治療の基本的な考え方
鍼灸治療とは、鍼(機械的刺激)や灸(熱刺激)を直接人体へ施すことにより、生体反応を起こす治療法です。鍼灸の刺激は自律神経系、内分泌系、免疫系等に作用し、この3つのバランスを保つことで、恒常性維持(ホメオスターシス)機能を改善する働きがあります。
鍼灸刺激→皮膚や筋肉などの組織に微小の傷をつける→傷を修復するために細胞が活性化→自然治癒力・免疫力などが向上する(生体防御反応)
つまり、、、
鍼灸刺激→自律神経系・内分泌系・免疫系等に作用→生体の恒常性維持機能に寄与
鍼灸治療の効果について
1 自律神経による内臓機能の調整(体性―自律神経反射)
鍼刺激→体性感覚神経→自律神経→内臓へ作用
※内臓の運動・分泌は自律神経によって調整されている。
例1)消化不良・食欲不振
手足など末梢への鍼刺激→副交感神経を刺激→胃の運動亢進(上脊髄反射)
例2)胸やけ(胃酸分泌過多)
腹部への鍼刺激→交感神経を刺激→胃の運動抑制(脊髄反射)
2 循環改善
鍼刺激→軸索反射→CGRP分泌(カルシトニン遺伝子関連ペプチド。血管拡張物質)→筋血管拡張→血流改善
3 鎮痛作用
鍼灸刺激により神経系においる脊髄レベル、中枢レベル、末梢レベルの段階で反応がおこることで相互的に功を奏する形で鎮痛作用が発揮される。
①脊髄レベル:ゲートコントロール説、いわゆる「痛いの痛いの飛んでけ~」。これは痛いところを「押したり、さすったりする」ことで痛みが和らぐというもの。これを鍼刺激で行うことにより、鎮痛作用を発揮させる。
②中枢レベル:鍼刺激を行うことで、脳・脊髄が刺激され、モルヒネ様(脳内麻薬)物質である
エンドルフィン、エンケファリンが分泌され、鎮痛作用を発揮させる。
③末梢レベル:鍼刺激を行うことで、中枢レベル同様に末梢に対してもモルヒネ様物質が分泌され、鎮痛作用を発揮させる。(下行性痛覚抑制系)
④血流改善による発痛物質の除去
鍼刺激→血流改善→発痛物質除去→鎮痛
4 筋緊張緩和
鍼刺激→血流改善→筋緊張にかかわる代謝産物除去→筋緊張緩和
※筋疲労(疲労物質蓄積)、精神的なストレスによる過緊張
→産生された代謝産物が筋肉内に蓄積する→侵害受容器を興奮させることで痛みを引き起こす
→(その痛みにより)交感神経が興奮する→血管収縮→筋の血流が悪くなる
→さらに代謝産物が産生・蓄積する→さらなる痛みを持続させる。
5 ホルモンのバランス調整
鍼灸刺激→脳・脊髄に入力→ホルモンの分泌・調整